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 寄せ書き 
橋本喬木「星先生の発想法」

大阪国際中学校高等学校勤務・ショートショート作家
 私は高校に勤める傍ら、ショートショートを書いています。 そして、あるコンテストに応募した「異常事態発生」が江坂遊師匠に認められたことをきっかけとして、光文社文庫『ショートショートの宝箱』シリーズ等に作品を掲載いただけるようになりました。

 そんな私ですが、小学生の頃はバリバリのテレビっ子だったので、本なんて一冊も読んだことがなかったのです。 ところが、中学生になって初めて手にした『宇宙のあいさつ』で、もう夢中に。 実は本を読み始めた時から読書記録をつけているのですが、一冊目の『宇宙のあいさつ』から『おせっかいな神々』『おのぞみの結末』……と、実に十七冊も続いているんですよ、星作品が。 まさに、むさぼり読む状態でした。 名作傑作が数多ある星作品ですが、中でも「ひとつの装置」(『妖精配給会社』収録)が頭の中にこびりついていて離れません。 あのボタン、押してみたいなぁ〜。 星先生は私を読書の世界に導いてくださった大恩人です。

 そして今、高校で働いていて思うのは「星先生の発想法は教育に必要だ」ということです。 というのも……


 大学に合格すること、それは一つの目標に違いありません。

 しかし近頃では、幼い頃から合格だけを目的として勉強させられてきた結果、大学を卒業した後、自分の意志では何もできない人が増えてしまいました。 今の世の中、言われたことをこなすだけの指示待ち族なんて、必要とされないのにね。

 これに対して、教育においては「探究」という言葉を耳にすることが多くなりました。 探究とは「ものごとの背後にある秘密や隠された意味などを、調べて解き明かそうとすること」なのですが、このことについては、星先生も言っておられます。 「学問のもとは、好奇心だろうと思う。 つめ込み教育、丸暗記でなく、好奇心を育てるようにしておけば、すぐれた人物も、しぜんに育ってくるのではないか」(『きまぐれ遊歩道』:「空想の楽しさ」から)と。 そして、そんな探究心・好奇心から「新しい何か」が生み出されるのです。

 では、新しい何かを生み出すために、具体的にはどうすればいいか。 星先生はショートショートの発想法として「そもそも、アイデア捻出の原則は一つしかない。 異質なものどうしを結びつけよ、である。 常識の殻を破りたいとは、だれでも考えていることだ。 しかし、この殻は非常に強固なもので、いかに待っても自然に割れてはくれない。 異質なものとの結びつきによってのみ可能なようだ」(『進化した猿たち 1』:「死刑をたのしく」から)と言っておられます。 「常識の殻を破る」、これこそが探究学習の目的であり、何かを生み出す力となるのではないでしょうか。

 そして、そのためには「考えること」が大切です。 単に言われたことをやっているだけではダメなのです。 最近では、SNS等で「これは良い」と発信されたものが爆発的にヒットするし、逆の場合には一気に炎上してしまいます。 でも、そんな付和雷同する人々に、自分の考えなんてありません。 やはり、自分で考えて行動しないとね。

 考える。 それには、若い頃に星作品に触れられたことが、とても役立っています。 私だけではなく多くの人々にとって。 だって、たくさんの読者が星作品から「物事に対して違った角度からとらえる発想の大切さ」を教わったのだから。

 今の教育において必要なのは「発想」を生み出すための力をつけることです。 そして、これまでにない「新しいもの」を生み出すには、星先生の発想法が役立つに違いありません。

 最後に、今回の結論。 生徒たちに星作品を読ませると、将来、人類に役立つ発明発見のできる人になる!?


2023年2月

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